歴史と人物に学ぶ NSP経営躍進塾資料より 「会社再建王 坪内壽夫翁 ⑯」 著:野見山 登

本田宗一郎と水枕

ホンダ創業者、本田宗一郎氏は、自らのアイデアを出す研究熱心な経営者で、ホンダを世界の自動車メーカーに育て上げられました。坪内翁は、当時のあさひ銀行松平忠晃相談役(元、日本銀行松山支店長)の自宅で紹介された。研究家の本田宗一郎氏は、後に坪内翁を自宅に呼び寄せアイデアを提供して下さったそうです。わざわざ用意していた水枕を手に持ち『坪内君この水枕のように衝突しても、荒波にもまれても沈まない船を造ったら』と提案なされたのです。坪内翁は早速、来島ドックでコンパクトな、しかも沈まない安全なゴム製のボートを開発した。
これが現在の救命ボートであると…。

元総理大臣池田勇人氏の 所得倍増論と池田は嘘を申しませんの逸話

池田勇人氏は総理大臣就任前、吹き出物が治らない為、四国88ヶ所巡りをし治療を祈っていた。松山市に立ち寄った際、池田氏が税務署長時代の部下だった大平正芳氏(後の総理大臣)が坪内翁を紹介した。

坪内翁と親交を深めた池田氏は『一言で大衆の心理をつかむ言葉はないか』と、相談しました。

総理大臣を目指していた池田氏にとって、国民の支持を得るキャッチフレーズは、政治家にとって命だったからです。

映画館経営をしていた坪内翁は早速、映画の題名をつける人に『大衆の印象に残る名文句は、何じゃろか?』と尋ねたそうです。色々な言葉を教えてくれたが、結論に達したのは『サラリーマンは給料が上がり、商売人は儲かること』であった。坪内翁は池田氏に『月給を2倍にする政策を進言』し、『政治家は嘘をつくことが多いので、嘘は決して申しません』と付け加えろと勧めたそうです。

この話から池田氏は『所得倍増論』を展開し『池田は、嘘は申しません』を選挙の合言葉に国民の支持をえたのです。昭和36年から実施された所得倍増計画は、日本の高度成長をもたらし世界有数の経済大国に発展しました。

元総理大臣田中角栄氏と浪花節

田中角栄氏は『老人票を獲得する方法』を坪内翁に相談されたそうです。坪内翁は『老人をひきつけるには浪花節が一番いい』と助言し、浪花節をつくって差し上げました。

出来上がった浪花節は「田中角栄とその母」と題し、親孝行の田中角栄氏の人となりをわかりやすく唄ったものでした。田中角栄氏は、この浪花節のテープを新潟の選挙区の老人に配った。お蔭で老人票を増やすことができ大喜びされたそうです。

その後、再度田中角栄氏は「女性票が少ない」と再度相談に来られた。

坪内翁は、作家の平岩弓枝さんを紹介し「平岩弓枝さんに話してあるので相談して下さい」と進めた。

平岩弓枝さんは「奥さんを大事にしなさい」と田中氏にアドバイスし、田中氏の夫人・

ハナさんを人気歌舞伎俳優の市川団十郎の講演会会長にされました。

団十郎氏の襲名披露式には、田中氏がハナさんに付き添って出席し、夫婦の仲の良さをアピールしました。このお蔭で女性票も伸び、総理大臣の名声を高められた。田中角栄氏の講演会、越山会の基礎は、「田中角栄とその母」の浪花節のテープと角栄の妻ハナさんの団十郎氏の後援会会長の影響が大きいのではないかとよく言われていた。

歴史と人物に学ぶほど生きた学問はない! 安岡正篤先生の言葉

次号もお楽しみに!

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