森信三先生のことば

「天の与え、天の恵み」

美とか詩情というものは、わたくしには貧しき者、恵まれない人、とりわけ人生の辛酸逆境にあえぐ人びとに対する、天の与える一種の恵みではないかとさえ思われます。
これ古来真に詩人たり芸術家といわれる人びとが、富みかつ驕れる人から輩出したためしのほとんど絶無に近いゆえんでしょう。
たとえば、山頭火ですが、結局彼の「生」が念々死に直面し、死と対決しつつあった処から来たものといってよく、この点彼の「碁中日記」が何よりもこれを証明しています。
(「不尽片言」)

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